特集

2011年3月27日日曜日

万が一の時、放射能雲から身を守る

食と健康、というよりは、万が一の時にどう身を守るかというお話。
(必ずしも「万」と言い切れないところがコワイですが)

事故発生から2週間あまりが経ちましたが、放射能漏れは未だ収束していません。
原発近傍(とりわけ北西方向)以外では、健康を脅かされるほどの放射線量にはなっていませんが、引き続き注意が必要です。

空間放射線量のグラフ
3月15日には一時的に大気中の放射線量が上がる(北茨城で5μSv/h、東京で1μSv/h程度)という出来事がありました。上がったと言っても一時的なもので、健康に悪影響を及ぼすレベルでは全くないのですが、爆発などによって放射能を含んだ塵が舞い上がると、200km以上離れた首都圏にも放射性物質が届くことがわかりました。
この日は北東方向、すなわち原発から首都圏方向に向かう風が吹いていたことが原因です。(絶対に起きてほしくないですが)万が一、致命的な爆発が起きて、大量の放射性物質がばらまかれたら、いったいどれくらいで届くのでしょうか。

3月15日を例に放射線量の増加をグラフにしてみました(茨城県、東京都が公表している数値を元に計算)。茨城県は市役所での10分おきの計測結果を公表していますから、東京のデータに合わせて1時間ごとの平均にしました。





北関東での風は、概ね北東方向で、地表での風速は3m/h程度でした。原発でのどんな出来事によって放射性物質が撒き散らされたのか今ひとつ不明なので、正確なことはわからないのですが、北茨城(市役所)での増加に続いて、1時間後には高萩(北茨城市役所から約10km)、5時間後には東京の新宿(北茨城市役所から約150km)で増加が生じています。当時の風速(3m/s程度)を考えると、東京への到達が早過ぎるような気がしますが、上空では風速が速いためと思います。風速・風向にもよりますが、原発から放出された放射性物質は数時間もすれば都心に届くようです(11/04/05追記:風速・風向で大きく変化するので「数時間」に修正。)。もちろん、距離が離れれば、塵も拡散するので、受ける放射線量もだいぶ下がることがわかります。
ちなみに、東京では、夕方にも再び放射線量が増加しています。あくまでも推測ですが、16時ころより風向が南東の風に変わっていますので、一旦通り過ぎた「放射能を含む塵」の一部が一旦、東京上空に戻ってきたのではないかと思います(11/04/05追記:概ね予想に近いですが、放射能雲の帯の蛇行が関係しているようです)。

万が一の時はどうしたらいいか
福島の原発から放射性物質が放出されてしまうと、風向きによっては半日ほどで、東京の放射線量も上がることがわかりました(風速によって変化)。しかし、風向きが変われば、放射性物質を含むガスや塵(放射能雲)は、吹き飛ばされていき、放射線量は再び下がります。(絶対に起こってほしくないですが)もしさらなる爆発などがあった場合、まずどうしたらいいか、ということですが、屋内に退避して、放射能雲が通りすぎるのを待つのが、懸命だと思います。変に逃げようとして、屋外に出て右往左往していると、もろに浴びてしまうことになりかねません。コンクリートの建物に入って、窓を閉め、換気を止めていれば、受ける放射線の量はかなり減らすことができます(うまくすれば1/10程度)。東京のように200km程度離れた遠方であれば、数時間屋内で耐えていれば、放射能雲をやり過ごすことができると考えられます。万が一のためにも日頃から関連情報に注意して、慌てずに一時退避することが重要だと思います。少し神経質かもしれませんが、私の場合は、ニュース等に加えて、茨城・埼玉・東京当たりの大気放射線モニタリングを時々チェックしています。なお、誤解を受けるといけないので、繰り返し書いておきますが、3月15日の放射線量上昇それ自身(5~1μSv/hを数時間程度)には健康上のリスクは全くありません



参考:どれくらいの被曝まで大丈夫なのか
被曝量の評価にはSv(シーベルト)という単位が使われます。一般人の法的な許容は0.001Sv、つまり1m(ミリ)Svですが、自然界に含まれる(ラジウム温泉など)放射能から受ける放射線として世界平均では2.4mSvほど浴びていると言われています。実験などで講習をうけた方はご存知だと思いますが、放射線従事者は50mSvが限度です。TVなどで累計100mSv(10万μSv)までは大丈夫などと言っている人もいますが、CTスキャンなどの医療被曝でもわずかながら、ガンを引き起こしているという論文もありますので(Berrington de González et al., 2004; Berrington de González et al., 2009)、どうしても避けられない場合を除いて、そこまでは浴びないほうがよいです(ガンが増える割合が僅かなのは事実です)。自然放射線+医療放射線+α程度である年間5mSv程度までなら、まず心配ないと思いますが、医療被曝と違って何のメリットもありませんので被曝量は少ない方がよいことは間違いありません(11/04/05追記)。

(100~200km程度離れた遠方ならば)情報に注意していて、万が一のことが起きたら、まずは換気を止めて屋内退避(風向きが自分たちに向かっている場合。東京では北東から来る風のとき)、これが真っ先にとることができて、最も有効な対処法だと思います。でも、こんなことを心配しなくてもいいように、現場の人々に感謝しつつ、問題解決の筋道がつくことを深く祈っています。


参考資料:

東京都・健康安全研究センター・都内の環境放射線測定結果
http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/→ 「環境放射線量測定結果(最新データ)」から現在の空間放射線量(新宿区)を知ることができます(蛇口の水道水、放射性物質降下量の調査結果も)。

茨城県(茨城県トップ > 平成23年東北地方太平洋沖地震関連情報>県内の放射線情報
http://www.pref.ibaraki.jp/20110311eq/index2.html
→県北の空間放射線量を知ることができます。
現在の様子を知るには
茨城県環境放射線監視センター(放射線テレメータ・インターネット表示局
http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/present/result01.html
もオススメ。こちらの値が上昇したら東京も要注意です。もちろん1~2μSv/h程度の上昇で一喜一憂する必要はないですが。

気象庁(ホーム > 気象統計情報 > 過去の気象データ検索
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php
→現在・過去の気象情報(風向・風速など)を知ることができます

Berrington de González A, Mahesh M, Kim KP, Bhargavan M, Lewis R, Mettler F, Land C. Projected cancer risks from computed tomographic scans performed in the United States in 2007. Arch Intern Med. 2009 Dec 14;169(22):2071-7.

Berrington de González A, Darby S. Risk of cancer from diagnostic X-rays: estimates for the UK and 14 other countries. Lancet. 2004 Jan 31;363(9406):345-51.
→医療被曝(主にCTなど)による発がんの可能性を指摘した論文(むやみにCT検査を繰り返すのは避けたほうがよい、という趣旨)。増分は僅かなので、必要な検査を恐れる必要はないです。

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