2011年10月21日金曜日

放射能と菌類 - 2 ~野生のキノコと栽培キノコをめぐる近況~

福島原発の事故発生から既に7ヶ月が経過しました。
3月21日「放射能と菌類」では野生のキノコは要注意なのではないか、という記事を投稿させて頂きました。(土壌汚染の程度などについて)むしろ読みが甘かった面もあったとは思うのですが、野生きのこでは最高28000Bq/Kg(チチタケ)に及ぶ放射性セシウムが検出された例もあるなど、各地で暫定基準値を超過した野生キノコが見つかっています。

やはり野生のキノコには注意が必要
キノコは、地表近くに菌糸を伸ばすという性質も影響して、放射性セシウムを取り込みやすい性質があります。特に、樹木の根から養分を取る「菌根菌」は、落ち葉や枯木などに生える「腐生菌」よりも放射性セシウムを取り込みやすい、ともいわれているように、確かに福島県の緊急時モニタリング検査で見つかったチチタケも菌根菌の仲間です。しかし、放射性セシウムの値は場所やキノコの種類によってまちまちで、数千Bq/Kg級のセシウムを含むキノコが各地で見つかっている一方、比較的近い地域であっても、かなり低い値で済んでいる場合もあります。おそらく局所的なホットスポットのようになった場所で高い値がでているのではないかと思います。高濃度の放射性セシウムを含むキノコがどこに潜んでいるのか、現時点でははっきりとはわからないので、ある程度の放射性セシウムが降下した地域では野生のキノコには十分に注意したほうがよさそうです。放射性セシウムの降下量は、文科省が公表している航空モニタリングがみやすいです。

文部科学省放射線量等分布マップ拡大サイト(航空モニタリング結果)
http://ramap.jaea.go.jp/map/

緊急時モニタリング検査(福島県)H23. 9. 3公表
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/mon230831-0902mv.pdf




菌床栽培のキノコは今のところ大丈夫そうなのだが…
栽培キノコの中でも原木キノコの一部では放射性セシウム超過の事例が報告されています。どうやら露地、ハウス関係なく出ているようです。空気を介して飛散したか、栽培時に原木が濡れたのか、現時点でははっきりしていません。一方、施設栽培の中でも菌床栽培では、今のところ暫定基準値超過は出ていないようです。キノコ好きのgatto e topoはひとまず安心しているのですが、8月くらいから菌床栽培のキノコでも放射性セシウム合計が100Bq/kgを超える事例がちらほら出てきました。今のところ大きく問題になるような値は出ていませんが、温度管理をするような室内で栽培されたキノコがなぜ?と思っていました。どうやら培地に使うオガクズや米ヌカが原因の可能性がありそうです。すでに徳島でオガクズを用いた菌床から放射性セシウムが検出されています(朝日新聞8月17日)。原発近隣地域の木材を使ったオガクズだったようです。それを受けて林野庁では菌床では150Bq/Kg以下、という基準を暫定的に設けました。シイタケでは最大3倍程度の濃縮が予測されるが、それでもキノコ自体は500Bq/Kgになるという計算から求められた基準値のようです。暫定基準値(セシウム500Bq/Kg)の食品を少し位食べてしまった位では心配する必要ないとはいうものの、工夫次第で減らせるものは何とか減らして欲しいところ、その観点からは菌床150Bq/Kgという基準はいささか高いように思います。被曝は少ないには越したことはないからです。木材でも皮に近い部分は(食用キノコの培地には)使わない、など工夫することで何とか菌床のベクレル数を下げて欲しいと考えています。林野庁でも「平成23年度内に改めて基準を設定する予定」とのことなので、キノコの菌床培地に関しては、より厳しい基準を採用して欲しいと願っています(キノコ自体が50Bq/Kg以下に収まると考えられる15Bq/Kg位に)。今のところ、モニタリング調査の結果を見るかぎり、菌床栽培のキノコは概ね大丈夫といえますが、これを万全にするためにも菌床の安全確保には力を入れて欲しいところです。


林野庁
東日本大震災について~きのこ原木及び菌床用培地の当面の指標値設定に関するご質問と回答について~
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/111021.html








0 件のコメント: