今日は魚にわずかに含まれていることがある水銀のお話です。
結論から言えば、少しだけ気に留めておけば、心配するほどのものではありません。魚には、良質な不飽和脂肪酸やたんぱく質が含まれていて、健康維持に有益と言われています。他にもいろいろ要因はあるものの、確かに、魚を多く食べる習慣のある日本(世界一)、地中海諸国(イタリア、スペイン、フランスなど)はいずれも高い平均寿命を誇っています。一方で、魚にはわずかながらの水銀が含まれており、特に妊娠しているときは気をつけたほうがいい場合もあるといわれています。
水銀は人体に必要ない元素
水銀は、常温で液体であるにもかかわらず、比重が重い重金属です。その性質を活かして、古くから温度計や化学工業などで広く使われています。亜鉛や銅などを筆頭に、大量に食べると害をなす物質であっても、微量ならば人体にとって必須元素!という例が非常に多いのですが、水銀やアルミニウムは人体には必要なく、基本的には摂取を避けた方がよい物質です。微生物によって少し変化したメチル水銀(有機水銀)は特に有害で、脳や脊髄など神経系にダメージを与える恐れがあります。かつて、大量の水銀を含む排水によって水俣湾沿岸の魚が汚染されてしまい、水俣病という重篤な公害病が発生してしまいました。今では工業排水は厳しく規制がかけられ、汚染された土壌も適切に管理されているため、日本の市場に出回る魚を食べることで、水俣病のような重篤な水銀中毒を起こす可能性は皆無です。その点から言えば、まったく心配する必要はありません。
胎児は水銀の影響を受けやすい
そもそも海水にはごく微量の水銀が含まれているため、魚介類にはわずかな水銀が含まれていることがあります。私たちの体には、不要なものを排出する機能が備わっているため、わずかな量の水銀を摂取したところで、すぐに排出してしまうため、特に影響がでることはありません。しかし、胎児や新生児はその能力が低く、水銀の影響を受けやすいといわれています。という訳で、妊娠している間は、水銀の摂取をできるだけ控えた方がよいのではないか、と言われるようになってきました。もちろん、(現在市場に出回っている程度の水銀濃度であれば)仮に食べ過ぎてしまった場合の影響としても、微妙に感覚への応答時間が少し遅れる・・・程度の違いが報告されている位で、重篤な障害につながるほどの量ではありません。とはいえ、影響は受けない方がよいには越したことはないので、妊娠している場合は、水銀の摂取を2μg/kg体重/週(1μgは、100万分の1g)までにおさえた方がよい、というのが基準になっています。つまり50kgの体重であれば、1週間で100μg(→0.0001g)以上の水銀は食べない方がよいということになります。
魚によってかなり変動がある
では、実際の魚にどれくらいの水銀が含まれているかといえば、種類によってかなり違いがあります。厚生労働省のページによれば、水銀が特に多く含まれている海産物としては、近海のクジラ・イルカ類で、21μg/g(バンドウイルカ)に達するものもあります。日常的に食べる可能性のある魚としては、メカジキやメバチマグロで1μg/g程度です(高級なクロマグロも同じ位)。妊娠している場合、近海のクジラ類は基本的に避けた方がよく(厚生労働省では2ヶ月に1回程度にとどめることを推奨)、1食80g位(切り身1切れに相当)であればマグロ類は1週間に1度程度に抑えたほうがよいことが推奨されています。ちなみにマグロ類でもキハダマグロ(0.3μg/g程度)、カツオ(0.15μg/g程度)は水銀は少なく、妊娠していてもそれほど気にする必要はありません。一方、同じ魚介類であっても、イワシ(マイワシで0.024μg/g程度)、アジ(0.049μg/g程度)など日頃から沢山たべる魚には水銀はほとんど含まれていません。魚によって水銀の含まれる量が大きく異なるのはどういった理由なのでしょうか。
1.「肉食」の魚ほど水銀が濃縮される
いわゆる生物濃縮というやつです。イワシやアジのように食物連鎖のピラミッドの下位にいる魚は水銀をほとんど含んでいません。でもそれらの魚を食べて生きている魚(マグロなど)は、少しだけ濃縮されます。さらにその魚を食べるクジラ類(特に肉食のイルカ類)はさらに濃縮されるので比較的多くの水銀が含まれてしまうことになります。
2.深海魚では濃度が高め
水銀を含むいろいろなものは、海底の方へ沈んで行きます。そうすると、どうしても深海に住んでいる魚のほうが水銀濃度が高めになります。例えばキンメダイは0.7μg/g程度の水銀を含みます。
3.内臓は注意した方がよい!
厚生労働省の資料で明らかにされているのは、魚肉中に含まれる水銀濃度です。イルカ類を除けばほとんど心配要らない水準ですが、内臓に関しては少し注意した方がいいかもしれません。人でいえば肝臓に相当する場所に水銀のような重金属が濃縮される傾向にあるからです。
という訳で、一口で魚介類といっても、アジやイワシのような魚は妊娠していても、全く気にせず食べてよいことになります。これらの魚に含まれているDHAなどの不飽和脂肪酸は子供の脳の発達を助ける働きがあるかもしれない、とさえ言われていて、むしろ積極的に食べた方がよいといえます。
繰り返しになりますが、日本の市場に出回っている魚について言えば、ほとんど気にする必要がないことがわかりました。妊娠している可能性のある場合、マグロなどを食べ過ぎないように少しだけ気に留めておく必要がありますが、豊富な栄養を含むためイワシやアジなどの大衆魚はむしろ積極食べた方がよいといえます。
ちなみに、gatto e topoの記録を見返したところ、我が家で日常的に食べている魚で該当するのは、メカジキ、メバチマグロ位ですが、週1回からそれ以下でした。日頃からよく食べているイワシ、アジ、タラ、マダイ、イカ、タコなどは、水銀に関してはほとんど気にすることはないようです(「タイ」でもキンメやアマダイは比較的多く含むようです)。という訳で、むしろ積極的に魚を食べています。
参考資料:
厚生労働省の下記資料を参考にしました。
魚介類に含まれる水銀の調査結果(まとめ)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/05/dl/s0518-8g.pdf
妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(Q&A)(平成17年11月2日)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/qa/051102-1.html#goku
2010年8月9日月曜日
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