今日はイタリア料理の紹介です。
日本でもあまりにメジャーなイタリア料理でこういう事を書くのは少々気が引けていたのですが、うちで食べる料理の筆頭はイタリア料理、ということもあって、実体験やいろいろな文献を参考にしつつ、「イタリア料理とは何か」ということに迫っていきたいと思います。
世界中に広がったイタリア料理を生み出した国、イタリアは地中海に長靴のように突き出した半島に位置します。イタリアの北にはフランス、スイス、オーストリア、スロベニア(旧ユーゴスラビア)と国境を接し、海を挟んで、西にはスペイン、南にはチュニジア、東にはギリシャとそう遠くない位置関係にあります。言わずと知れた古代ローマ帝国の本拠地で、その食文化の影響もヨーロッパ中(今となっては世界中に)に広がっています。魚介(イカ・タコ含む)、オリーブオイルを多く使うのは、地中海周辺の料理の特徴は共通ですが、地域によってかなり特色がことなることがイタリア料理の多様性を生み出しています。
・多様な地方料理
正確に言えば「イタリア料理」などというものはない、とまで言われてしまうほど多様な地方料理が存在します。例えば北部はフランス・スイスの食文化との共通点が多く、バターやクリームを多用します。だいぶ中部よりですが、ボローニャ周辺などエミリア・ロマーニャでは、バターやラードを使ったこってりとした料理が特徴です(ボロネーゼパスタやカツレツなど)。北東部はグーラッシュのようにオーストリアの食文化の影響を強く受けています。同じ北部でも西側の沿岸部(リグーリア)は、南仏プロバンス地方同様にオリーブやハーブをたくさん使った料理で、いわゆる狭義の「地中海料理」といえます。中部から南部はオリーブオイルを多用したいかにも「イタリア料理」というものです。カラブリア・プーリアなど南東よりの地域ではギリシャ料理との共通点が多く、シチリアなどはイスラム圏やスペインの影響下にあった時代も長く、様々な影響が見られます。沿岸部は魚介を多く使い、内陸部では肉類がメインなど、郷土料理には場所柄がよく出ています。こんな具合に多種多様なイタリア(地方)料理ですが、ローマ時代からの影響もあってか、そして近年では物流の進歩もあって、ところどころに共通点があったりします。いずれも素材の味を活かした調理が特徴的です。
・ハーブ類としてはパセリ、バジル、ニンニクを多く使う。
バジルやイタリアンパセリなどのハーブがアクセントとして使われています。葉物の野菜としてはルッコラが有名です。バジルソース(ジェノベーゼパスタなど)やベルデソース(緑のソース)、ルッコラソースのようにバジルやパセリ、ルッコラが主体のソースもあります。フランスに近い地域ではタイムも多く使い、ギリシャに近い南部ではオレガノを多く使うようです。
(タイのルッコラソース)
・スパイスは控えめ
イタリア料理全般でいうと比較的シンプルなハーブの使い方をし、野菜・肉・魚など素材の味を大切にしているのが特徴です。一方で、風味豊かなオリーブオイルが調味料のように使われています。もちろん、胡椒は広く使われており、他のスパイスも全く使わないということはないですが、控えめなのが特徴です。イタリア料理というと唐辛子の印象も強いですが、すべての地域でたくさん使っているわけではありません。一方、南部、特にカラブリア地方などでは唐辛子が多用されています。
・トマトや唐辛子は大航海時代以後に普及
イタリア料理というと、とにかくトマトという印象をお持ちの方もいるかも知れませんが、イタリアでトマトが普及したのは大航海時代からしばらくたってからです。様々な地方料理に挑戦していると意外にトマトを使わないレシピも目にします。トマト以前から、アンチョビ(及び魚醤)など様々なものが調味料として使われていました。
・世界的に広がったパスタ
練り物としてのパスタはイタリア料理の基本です。パスタの普及はかなり古く、中世の庶民の食事から広がりました。南はデュラムセモリナ粉の乾燥パスタ、北は卵入り・軟質小麦の生パスタという棲み分けがあります。特にボローニャ周辺などエミリアロマーニャ州は卵入り生パスタで有名です。南部はアルデンテという少し硬めの食感を大切にします。
・煮込み料理としてのイタリア料理
いろいろなものを煮込むというスタイルがメジャーです。アクアパッツァやカチュッコのような魚介の煮込みから、ファッロ小麦のミネストラのような煮込みまでいろいろな地方料理があります。今ではたいていのレシピにトマトを入れますが、元々はトマトは入れないレシピでした。
・イタリアで米料理といえばリゾット!
やっぱり渾然一体となった煮込み料理ですが、リゾットが名物米料理です。渾然一体ではあっても、お米自体は「アルデンテ」というところがリゾットの真髄です。もちろんリゾットに限らず、米入りのスープ(ミネストラ)やお米のサラダ、お米のトルタなどど米を使う料理がたくさんあるのが特徴です。特に、ピエモンテ、ベネトなど北イタリアは米の産地として有名です。
(ナスとモッツァレラのリゾット)
・イタリア版ファーストフードとしてのピザ
ピザも世界中に広がっていた料理の一つです。ピザ専門店で座って食べるものから、街角で切り売りしているものまでいろいろあります。日本やアメリカで広く普及しているピザに比べると、具がシンプルでさっぱりとしている印象があります。南部(ナポリ)のピザは有名で、モチモチとした生地が特徴です。うちではピザはまだ作った事はありませんがいずれは挑戦してみたいです。
・チーズを料理に多用する
フランスに比べると、オリーブオイルを多く使うのもイタリア料理の特徴ですが、料理にチーズを使うことが多いのもイタリア料理の特徴です。パルミジャーノのようなチーズを摩り下ろして料理にかけることもありますし、カプレーゼのようにサラダの具になったりすることも、ナスのパルミジャーナのようにオーブン焼きにされることもあります。フランス同様に数々の郷土の特産チーズがあります。
(ナスのパルミジャーナ)
・フランスに並ぶワインの産地
イタリアは、フランスに並ぶワインの産地です。たくさんの土着品種や地域呼称があって、把握するのはなかなか大変ですが、地方ごとに特色のある多様なワインが楽しめます。数多くの土着品種が守られているのが特徴です。ワインの生産は、古代ローマ時代から、オリーブと並ぶイタリアの主要産品です。このようにイタリアといえばワインのイメージが非常に強いですが、グラッパのようにブドウベースの蒸留酒もあります。
参考図書:
池上俊一「世界の食文化15 イタリア」(農山漁村文化協会、2003)
→パスタの歴史や農民食から広がってきた歴史のくだりなどを参考にしました。
「イタリア地方料理の探求」(柴田書店)2005
→地方ごとの料理の特色などを参考にしました。
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